R・オースティン・フリーマン4

依然旅行中ですが、私的書評を送ります。今回のご紹介は、またもやソーンダイク博士もの『キャッツ・アイ』です。このタイトルは宝石で、それにまつわる殺人事件を、冷静沈着な博士と、ややもすると脱線しがちな弁護士アンスティのコンビで、極めてロジカルかつ科学的に解明していくというストーリーです。読んでいるうちに、私の関心は、むしろ17~18世紀の「ジャコバイトの反乱」に向いてしまいました。清教徒革命や名誉革命によって、王権の力は著しく制限されてしまいましたが、名誉革命によって追放された(亡命した)ジェームズ2世とスチュアート家の正当性を訴えたスコットランドのカトリック教徒は反乱を起こします。幾度もの合戦により、彼等は、やがてイングランド政府軍によって抑え込まれてしまうのですが、その反発心や怨念はスコットランドで色濃く残っており、その残響がこの小説のBGMになっているように、自分には思えました。王統、信仰、階級そして地域性、これらが複層的にからみ合っているので、英国小説は面白いのかも知れません。