ジョー・ウォルトン

自分自身はとうの昔にフェアリーが見えなくなってしまいましたが、こうした(ファンタジーの)世界が本当は存在しているということを、人はみな再認識すべきでしょう。今回ご紹介の『図書室の魔法』はそんな気持ちを呼び戻してくれる貴重な一冊(上下二巻ですが)だと思いました。ヒロイン役のモリちゃんは、やや小難しい性格なので、おそらく傍にいたとしても自分と気が合うことは無さそうですが、とても豊かな感受性をもっていて、自分の周りの人々の言動や、その環境を見事に分析して表現しています。こうした分析が出来るキャラを、自分も何とかしてもちたいものだと強く感じた次第です。よく言う「見えてるけど見えない」「感じられるはずなのに感じていない」ことが、実際にはあまりにも多く、自分自身は人生をずいぶんと損している気がしてなりません。そうした感性を育む要因は、ほぼ間違いなく文学(小説や評論)の読書量に由るのではないかと考えています。書物を手にする環境としては、学校の図書室や図書館がそれですが、自らを振り返れば、文芸書が多い学校の図書室は殆ど活用しませんでしたし、市の図書館には足繁く通っていたのですが、読む本が偏りすぎて(メカ系生物系)いました。いくら魔法が使えても、すでに結果の出てしまった過去に戻ることは出来ないので、せめて今から、これからせっせと文芸書読書量を増やし続けていきたいと思います。とはいえ懐も書棚も限られていますので、やっぱり公共図書館が自分にとって、とても大切な場所になるのでしょう。