Helen McCloy 4

WPに引越してようやく一年経ちました。拙いブログですが、ご訪問大変ありがとうございました。今後ともよろしくお付き合いいただければ幸いです。さて今日の話題はマクロイ女史の『ささやく真実:The Deadly Truth』。これはかなり難しい作品でした。被害者であるクローディア・ベスーンの過去は謎、ホームパーティに招かれた客人たちの出自も不明なので、殺人に及ぶ動機が探れません。そのうえ、関係者のアリバイは全員無しという相当に厄介な事件です。この話のキモは「自白剤」なのですが、これを飲んでしまった関係者が発する「真実」が新たな軋轢を生み、殺人の引金となるのです。考えてみれば、「真実を語ること=善行」という図式は社会生活では成り立ちません。考えてみれば明らかで、マンガにあるような吹き出しをことごとく外部に発信していたら、職場でも学校でも、更には家庭でも修羅場が発生することは誰しも納得できることです。別の言葉で云えば、社会生活の知恵として、「嘘も方便」という、昔から使い古された慣用句に凝縮されております。配慮された嘘とは、社会生活の潤滑油でもあり、クッションでもあります。
精神科医でもある探偵役のベイジル・ウィリング博士が登場することもあり、マクロイ女史の物語には人の心の奥底をえぐるような描写が出てきます。単なる謎解きやトリック明かしに留まらない面白さが特徴で、自分的には大好きな作家です。