S・S・ヴァン・ダイン2

GWにまったくミステリを読了できなかった自分ですが、ようやく元のリズムを戻しました。手始めは『グリーン家殺人事件:THE GREEN MURDER CASE』(1928)です。文庫本(創元推理文庫)で424ページというので、中ぐらいの長編ミステリですが、犯人が分かるのは392ページというから、じつに長時間、右往左往に翻弄されました。もちろん私が推測していた犯人は外れました。古い屋敷には悪霊が住むというのは正しくなく、同じところに長い期間とどまると、心や空間に澱のようなものが溜まりだし、ヒトという存在は次第におかしくなってくるのかも知れません。そこに「Bloodline」という要素が加わることで、「異常」が生じるようになるのでしょう。旧家が没落しないようにするためには、子孫は互いに干渉しないように空間的に乖離するのが、シンプルですが有効な手法だと思います。これを守れば、グリーン家の殺人事件は起こることもなかったでしょう。館にとどまることに、異様にこだわる遺言書がまさにこのケースの元凶だと思います。先のことは何も分からないのに、過去にしがみつき未来を閉塞するような判断をしてしまう人間の愚かさを感じました。