自分が図書館で探す棚のひとつに「返ってきた本」の棚があります。ジャンルに拘らずに、そのときに動いている書籍を見つけると、意外な発見があるからです。ヘイグの『ミッドナイト・ライブラリー:The Midnight Library』(2020)もそんな一つです。ローラ・シードという一人の女性が、世の中が嫌になって睡眠薬自殺を図ったときに起こった、この世でもない、あの夜でもない、不思議な空間「夜の図書館」の話です。これに限らず、図書館ネタや古書店ネタのタイトル書籍は人気があります。本に関心があるから、こうしたストーリーには刺さるものがあるからでしょう。街角のちょっとした書店でも、並べられた本の先にある世界は、おそらく宇宙的な拡がりをもっているはず。この作品では、もしもそれらが自分の人生の選択肢の一つ一つだったら、という設定で物語は進んでいきます。こうした人生の分岐点は、誰しも経験があるはずですが、残念ながら選ぶのは一つだけ、そしてその結果が現在の自分のいる世界になっています。「あのとき別の道に進んでいたらどうなっただろう」と一度も考えたことがない人は、そう居ないと思います。ローラもその一人、いまの自分が嫌で、自分のすんでいる世界が嫌で、もう望みはないと睡眠薬自殺を図ろうとします。夜の図書館には、こうした後悔ばかりしている転移者(スライダー)が紛れ込んだりします。図書館なので司書がいます。そこでは彼女の人生の指南役とも言っていい、その半生で影響のあった人物が演じています。相談しながらローラは様々な人生を「体験」していきます。そしてそこから得たものは何だったのか?とかいうストーリーになっています。「並行世界」とかいう概念もありますが、ここで表している世界は少し違うようです。一つのシード(種)から枝を伸ばしていく樹木のような世界のように思えます。この本は自分の人生を振り返ってみたいときに読むのがいいかも知れません。ベストセラーになっているのには思い当たる人たちが大勢いるからでしょう。









