バーナビー・ロス

今さらながらの感もあるのですが、WEB図書館で『Yの悲劇』を読みました。今まで読む機会が無かったのは不可思議ですが、フラッシュバックしなかったので、やはり初めてだったようです。これだけ有名な作品になると訳本も数多でているようです。WEBで出ているものは、権利の関係でしょう、基本的にかなり古い訳本がベースになっているのが普通です。この作品も、「田村隆一訳」となっておりますので、なかなか古く1961年版だと思われます。障がい者への表現についても直接的で、決して今日的ではありませんが、印刷されて、書店に並ぶ書籍になっているので、当時では恐らく、そういうものが普通だった時代だったのでしょう。改めて書くことではないですが、いまの訳本では「エラリー・クイーン著」となっていますが、X・Y・Zの悲劇と『ドルリー・レーン最後の事件』の四部作は、タイトルにある別名義(バーナビー・ロス)で当時は出版されていました。どちらの名義でも、実際に執筆したのは同一人物で、ユダヤ人の従兄弟二方のペンネームということになります。作品によって名義を分けるというのは、なかなか遊び心がって面白いです。お二方の執筆者は、互いに異なるタレントをもっていて、彼らの共同作業によって、このような素晴らしい小説が作れるのですから驚きは隠せません。昨今はそうした分業もさほど珍しいことではありませんが、バーナビー・ロス(またはエラリー・クイーン)は、そうした点では時代を先駆けていたのでしょう。