近隣の図書館にギャスケルの処女作品である『メアリバートン:MARY BARTON』(1853)在架していることを知り、借りてみることにしました。ギャスケル作品は長いのが多く、これも450ページとなかなかの大作です。今回は田舎町の話ではなく、副題に[マンチェスター物語]と出ているので、都市に住む労働者の話です。ちょうど産業革命の最中の話なので、出てくる人は貧しい工場労働者やその階級の人々です。いわばディケンズ風の舞台設定ですが、ギャスケルの描く彼らは善人ばかりなので(争いごとはあっても彼等の心には家族や仲間たちへの深い絆が感じられるものです)辛い境遇を描写していても、行間には爽やかな風を感じられます。この本を読んでみて、最近使われていない言葉を思い出しました。それは「やせ我慢」です。より貧しい人や困っている人に、本来は自分の食べるぶんを差し出す姿や、愛する人や家族を守るために自分に不利な状況でも受け入れていく行動は、近年のまるで真逆な風潮をあちらこちらで耳にすると、物質的な豊かさと、人の魂の気高さとはまるで異なる次元のものだという事が分かります。ギャスケルの作品を読むと、それぞれ考えさせられる何かを得ることができます。









