クリスティの短編集『黄色いアイリス:The Regatta Mystery and Other Stories』(1932 -1939)は日本向けとして再編集された短編集のため、ポアロもの、パーカー・パインもの、マープルもの、ノン・シリーズから集められた9話です。かなり有名な短編ばかりですので、個別に読まれた方も多いと思います。またTVドラマ化もされていますね。幾つかの面白い発見もあります。たとえばポアロものの脇役として有名なミス・レモンも活躍する「あなたの庭はどんな庭:How Does Your Garden Grow?」は、彼女の正確な相棒ぶりを発揮しています。下手すると余計な脱線をしてしまう某大尉より優秀かも知れません(笑)。出色は「仄暗い鏡の中に:In a Glass Darkly」でしょうね。犯人は誰だ!とか嘯いていると、意外な展開に踊らかされます。短編ながらヒントはさりげなく出ているのですが、人は誰でも見えるものしか見てないものです。クリスティの描くプロットの素晴らしさに感動ものです。あとはポアロは傲慢すぎるとか巷では批判もありますが、「黄色いアイリス:Yellow Iris」などを読むと、彼の印象は変わるかも知れません。「過去は去るに任せなさい、現在のことだけをお考えなさい」。心の痛みを知るからこそ、こうした言葉が出てくるのだと思います。探偵業は人間観察力次第、ということは他者を理解することが出来ない者は、立派な探偵にはなり得ないということでしょう。









