Alanna Knight 3

時間ができたので、いま邦訳で出ているナイト女史の第三作目『蒸気機関車と血染めの外套』(1989)を一日で読みました。ファロ警部補シリーズです。英文タイトルは”DEADLY BELOVED”で「致命的な愛」とでも云うのでしょう。このタイトルの小説は幾つか出版されており、東京創元社は日本人読者に向けてもう少し具体的な表現に改めたようですが、読み終えて感じたのは、英文タイトルの意味深さと、皮相的とも言える日本語タイトルの陳腐さでした。期待が大きすぎたこともあって、本作品はやや拍子抜け、スケール感が萎んでしまいましたね。それにしても男性というのは、異性に心を奪われると、本来の理性も判断力も失ってしまうものだということが良く分かります(常に情感だけで理性も判断力も欠けている御仁も少なくないですが)。今回も19世紀のスコットランドを舞台にした歴史ミステリを読みやすく仕上げています。作風はロマンチックな味付けが必ずあって、殺人事件などのおどろしさを和らげている所が好きです。当時の英国社会は、階級制度と男尊女卑ががちがちに組み込まれている訳ですが、そうした中でも、潰されずになんとか健気に自らを鼓舞していくような女性を描いていることで、読んでいても気持ちは良いです。こうしたタッチは男性作家には難しいでしょうね。