さて、新サイトで先ずご紹介する本は『クロエへの挽歌:Dancers in Mourning』です。1937年の作品なので、比較的初期のものです。アリンガムの作品は、中後期になってくると文脈構成が複雑化して、読み進めるのに難儀するものが多くありますが、この本はとても読みやすく好きです。もしかすると、井伊順彦氏の翻訳が素晴らしいせいかも知れません。ちょうど二つの大戦の狭間、この時代は色々なものが生まれ、その一方で古いもの(古き良きものとは限りませんが)が壊れていくタイミングで、人々はそれらに人生を翻弄されていくことになります。成功もある一方で、挫折も多かったと思います。妬みや怒りが渦巻き、ある意味では物語を描くにはとてもおもしろい時期だったのでしょう。笑えるのは、いつもは冷静沈着な紳士を演じるキャンピオンなのですが、今回は人妻に恋慕したり、真犯人を取り間違えたりと、けっこう人間味あふれる行動をとったりしています。こうした姿に、キャンピオンもやっぱり一人の人間なんだな、と少しほっとして、好感を感じてしまいます。逆にいくら正しくとも、まるで隙きのないような人には、どうしても近寄りがたいものです。英国人からキャンピオンが好かれているのも頷けます。









