アリスン・モントクレア3

大好きなシリーズの三作目にあたる『疑惑の入会者』です。噂ではすでに出版されているのは五作ということですので、続編も楽しみです。毎回すてきなウィットを加えながら、アイリス・スパークスとグウェン・ベインブリッジの凸凹コンビが繰り広げる展開ですが、今回も愉しませてもらいました。また巻末の解説をみて驚かされました。それによれば、じつは作者はテキサス出身のアメリカ人で、しかも男性だという点でした。当人アラン・ゴードン氏の本業は弁護士で、小説だけでなく脚本なども手掛ける多芸多才な方のようです。そう云えば、文字を追っていると、女性目線ではなく、どこかしら男性的な形容が感じられたので、種明かしがされて、ああなるほどねと得心した次第です。それでも、そこかしこに繰り出されるウィットには笑わされます。万事に即物的なアメリカ人にも、ユーモア精神たっぷりの方が居るのでしょうね。ユーモアというのは心のオアシスでもあり、会話のよき潤滑油にもなります。よくない意味で生真面目な我がニッポン人は、おそらく百年かけても、そういった領域に到達できそうにありませんが。
さて余談ながら、最後の方に『机の秘密』という短編が加えられておりました。軽めかも知れませんが、短いなかにもミセス・ベインブリッジとミス・スパークスの魅力がちゃんと描かれています。これを読んで、「短編もまた愉しからずや」と再認識した次第です。