Elizabeth Gaskell

のべつ幕なく本を拾い読みしていると、ときどき素晴らしい出逢いがあります。ギャスケル夫人の『女だけの町:CRANFORD』(1853)もそんな一冊になるかも知れません。Cディケンズの依頼で、彼の編集している週刊誌に掲載された短編を、一冊の単行本として纏めあげた作品です。19世紀、架空の田舎町クランフォード(おそらくナッツフォード)で繰り広げられたレディたちの人情噺です。善人ばかりで根っからの悪人は一人も登場しません。古き良き時代から、新しい社会に変わりつつある世相のなか、翻弄されている年配のレディたちの生き様を、彼女らに関係する一人の若い女性、メアリー・スミス(もしかするとギャスケル自身を投影しているかも)の目で、暖かく見守っていきます。一見すると、取るに足りない市井の人々の暮らしの中の立ち振る舞いが延々と続く物語ですが、意外にも愉しく読ませていただきました。時代はいつの時でも移り変わるものですし、いまの私たちの暮らしぶりに置き換えても、あまり違和感を感じないのは不思議です。牧師の娘、ミス・マティーについてのメアリーの父親の言葉「まったく汚れのない立派な生活を送っていると、人間どこにでも友だちができるものだなあ。」を聞くと、本当にそうだと感じます。この本のなかで語られる「上品な生き方」というのは、どういうことなのでしょう。考えさせられました。面白おかしく読んだのに、あとに何も残らない小説は数多くありますが、今回は違いました。ギャスケル夫人の作品はもう少し読んでみようと思います。