Ellis Peters 21

「修道士カドフェル」シリーズも、拙宅書棚に残っているもので、読んでいないものは第17作目『陶工の畑:The Potter’s Field』(1989 )だけになりました。ふつうは17作品も書くとマンネリ化してしまうものですが、舞台をシュールズベリーから離して、街の東、セヴァーン川下流のほとりに位置する、ロングナー荘園脇にある土地でおきた事件が発端です。荘園主の死去に伴い、修道院に遺贈された土地では粘土が採れ、その土地を借りた陶工が妻と共に作業場にしていましたが、ある日を境に、この陶工は修道院に出奔し、修道僧に帰依してしまいました。残された妻は、そのうち何処とも知れず姿を消しますが、この土地は寄付により修道院のものとなり、そこを畑地として開墾するべく鋤を入れたところ、勢い余って土手の斜面にまで鋤が入ってしまいました。そしてそこには女性の遺骨が、という展開になります。姿を見せなくなった件の陶工の妻ではないか?という嫌疑がもちあがり、出奔した修道士にその疑惑の目が向けられます。ところが修道士にはアリバイがあり、そこから更に二人目の女性の失踪が浮き上がります、という感じで二重三重のプロットで読み手を翻弄させてくれます。それにしても感じたのは、中世(12世紀)はとんでもなく男尊女卑の世だったことです。結婚していても男性は修道院に出奔できるし、カトリックでは結婚の契りは、片方が死なない限り消滅しません。男の出奔で残され、ひとり身になった妻は寡婦にもなれずに、再婚も叶いません。今からすると、とんでもなくひどい話です。女子修道院へ入り修道女になるという選択肢もありますが、未婚であることに加え、少なくない持参金を必要とされるケースも多かったらしく、ここでも男女差の壁は高そうです。時代に翻弄された女性が犠牲者になったり、あるいは加害者になったりしてしまうのですが、本質的には男尊女卑の宗教的な世界観が、一番問題なのだと感じました。