今回ご紹介するのはカーター・ディクスンの『貴婦人として死す:She Died a Lady』(1943)です。舞台となるのは、ノース・デヴォンの海沿いにある小さな村です。人妻とアメリカから来たという若者が疾走し、やがて遺体が海から上がります。巷では心中事件として醜聞化しますが、たまたま村に訪問していたH・Mことヘンリー・メルヴェール卿は見逃さず、「心中ではなく殺人事件である」とし、その手口と犯人探しを始めます。ところが、なかなか解決への糸口が見えてきません。そして、その容疑者も二転三転して、結末近くで意外な人物にたどり着くという訳です。カーの作品は、世間にあまた居るクセの強い読者(実生活ではあまり近づきたくない人々)を翻弄することに、作品への情熱を最大限に注入しているものが多いように思えます。言い換えると、読者との騙し合いに注力しているとさえ感じてしまいます。もちろん、その結果として古今東西、推理作家として高い評価を誇っているのだからケチをつける云われはありません。ですが、個人的には振り回され感がどうしても拭えないので、読後感が疲れを伴うものになってしまいます。もしかすると、おそらく自分はコアの(=ひねくれた)ミステリーファンとは言えないのでしょう。









