Ellis Peters 13

エリス・ピーターズ女史の「修道士カドフェル」シリーズ、今回のご紹介は、一つ戻っての第6作目は拙宅にある最後の現代教養文庫版の『氷の中の処女:The Virgin in The Ice』(1982)です。訳者は岡本浜江さんで、ふりがなを付ける言葉がどういう基準でされているのか謎でしたが、全体的にみて読みやすく、訳出は悪くないなと感じました。然しながら、出版側の問題でしょうが、1993年ということで印字は古臭いですね。カドフェルは十字軍から戻ってきて、いまや天涯孤独の身かとも思いましたが、そうではなかったようでほっこりしました。今回の物語の舞台はいつものシュールズベリーではなく、20マイルほど南に下ったラドロー周辺になりますが、このあたりは領主の立ち位置が揺れている一帯で、形ばかりはスティーブン王についているものの、女帝モードに反旗を翻しそうな空気が漂っています。ウスターを襲った内乱の襲撃から逃れるべく、同地ベネディクト修道院にいた貴族の姉弟がラドローに向かったものの、付添の修道女ともども行方不明になったということで、彼等の保護を行うためにカドフェルが、州執行副長官ヒュー・ベリンガーと共に現地に向かいます。しかし、地域一帯はこうした無秩序を反映してか、盗賊が跋扈して、地区集落への略奪など乱暴狼藉を働いております。果たしてカドフェルは無事にミッションを達成できるのでしょうか?
こうしてみると、国のなかの内乱とはいえ、争いごとは様々の悪魔を呼び寄せます。いまも昔もそうですが、庶民にとっては、政治というのはイデオロギーの違いなどより、何よりも日々の暮らしが安定していることが一番のように思えます。