Ellis Peters 12

ひと月ぶりにエリス・ピーターズ女史のところに戻ってまいりました。「修道士カドフェル」シリーズ第7作目『聖域の雀:The Sanctuary Sparrow』(1983)の光文社文庫版です。訳者は大出健さんで、個人的にはいい訳出だと思っています。孤児が旅芸人になるというストーリーは、遠く離れた日本でも似たような話を聞きます。芸のワザひとつで身を立てるというのは、財産のあるなしに拘らず簡単に出来るものではありませんね。生まれた時から備えていた才能が発揮しているのでしょうか。
それにしても「レベック」とかいう楽器、寡聞にしてこの齢になるまで知りませんでした。バイオリンの祖先のような存在で、洋ナシ形で2~3弦をもった弦楽器だそうです。アラビアから中世ヨーロッパに伝わったものだそうですが、この分野でもアラブ人は先進的だったようで驚きました。
今回の事件はなかなか歯切れが悪く、犯人にも同情することしきりです。あらためて中世の女性たちの屈曲した人生観のようなようなものを感じてしまい、悲しくなってしまいました。事件に至った動機は、間違いなく人間関係の殺伐さに起因したものだと思います。お金はないよりも多少あったほうが良いですが、吝嗇も度が過ぎると人と人生を腐らせます。旅芸人リリウィンは本当の幸せを掴みましたね。