『ジェイン・エア』に続くシャーロット・ブロンテ女史の作品と云えば、『ヴィレット:Villette』(1853)ではないでしょうか。イギリス人孤児のルーシー・スノウの物語が描かれていますが、これはもうシャーロット自身の自叙伝に近いともいえる作品です。その活躍する舞台を大陸(おそらくブリュッセル)に置いて、そこでの教師生活のなかで、ルーシーを取り巻く様々の人々との出会いを丁寧に描いています。頭のからっぽな人間は多く登場してきますが、根っからの悪党は一人も出てこないので、個人的にも大好きな小説です。「前夜よりも静かで強くなっている今の私の心は、自らに緊急の掟を課して、過去の幸福を弱気に回顧することを厳罰をもって禁止した。そして忍耐強く現在の荒野を旅し、信仰に頼ることを命じた。」まだ若い女性が一人で大陸に渡り、自らを鼓舞しながら日々生きていく様は、おそらくは多くの女性たちを勇気づけたことでしょう。もちろん、小説のなかでは多感な女の子らしく、思わず湧き出す嫉妬心とか、諦めていた愛情を知った心からの喜びなども描かれていますが、全編を通して平板なラブストーリーを超えた世界が展開しています。辛さに涙を流しながらも、前を見ながら、少しずつ一歩ずつ歩いていくことを自らに課しているルーシー。いくら信仰に裏付けられたからと言って、このような生き方が実践出来る人は、心から尊敬してしまいます。
昔のエッセイ↓
http://duke-box.sblo.jp/article/189403237.html
http://duke-box.sblo.jp/article/189674484.html









