Elizabeth Ferrars

寡聞にして初めて読んだ作家ですが、なかなかの人気作らしく、今回読んだのが『ひよこはなぜ道を渡る:Your Neck in a Noose』(1942)が第5作目で最終作だというので驚きました。英米だけに絞ってもミステリの世界は広くて深いです。このタイトルに惹かれて読むことにしたのですが、個人的には意味不明でした。調べてみると、英米圏で使われるひとつの慣用句で、つまらない冗談を言った人に対して使ったりする表現だそうです。文化というのは面白いものです。…で、この作品ですが、なかなか会話が面白い。トビーとジョージという面白いコンビのやり取りが笑えますが、それ以外でもウィットに富んだ表現が頻出します。「ねえ、あなた、彼女に恋しているわけ?」「ぼくの知る限りでは、そんなことはないですね」こんな洒落た言い回し、わたしも一度話してみたいです。とはいえ、そうしたやり取りができるためには、相手にも相応のセンスが必要なので、そう簡単ではありません。一番の収穫は、訳者の中村有希さんの訳出力ですね。セイヤーズの訳者浅羽莢子さんに感化されたと、訳者あとがきで書いておりましたが、たしかにどちらもステキな訳出です。