Robert Goddard 3

ゴダード作品の特徴の一つは、時制を伴う人の愚かさや醜さを見事に描くことにあります。この『惜別の賦:Beyond Recall』(1997)もそれが重要なプロットを作っています。氏の作品に登場する主人公はプライドは高いくせに心の弱い人間が多く、辟易しながら読んでしまうのですが、なぜか共感しているので、おそらくどこかで私自身と重ねてしまうのでしょう。今回の主人公、クリス・ネイピアもそうです。ところが、過去の事件を掘り返すなかで、周りの人間の醜さのみならず、自分の愚かさを嫌と云うほど知ってしまい、最後の方は自分なりに矜持をもって生きていく人間になっていきます。でも、初めからそうだと面白い物語はできないので、やはりこれがゴダード流のストーリー・テリング力と言えるのでしょう。自分にはインパクトがちょっと重いのですが、今回もまた考えることの多い物語で、どうやらゴダードの呪力からは離れそうもありません。