この時代のミステリ作家のなかで、個人的に気に入っているのがセイヤーズ女史とバークリー〔とフランシス・アイルズ〕です。『レイトンコートの謎:The Layton Court Mystery』(1925)を読んだときにも感じたのですが、ロジャー・シェリンガム氏の迷探偵ぶりをみて思い起こしたのが、ピーター・ウィムジィ卿の人間臭さです。ポアロやホームズからは人間臭さは殆ど感じられませんが、探偵もまた人間なのですから、試行錯誤しながら犯人探しをしていくプロセスに共感を覚えてしまいます。読み手と一緒に、二度三度と間違えながらも、探求の手を緩めない。そこがまた気に入りました。人は間違えるもの、それが前提で生きていけば、ストレスも随分と減るのかもしれません。えてしてコミカルな展開は目立ちますが、それにしても、百年前にこのプロットをデビュー作品を構成できた手腕は驚くべきものです。こういう人間を天才と呼ぶのかも知れません。









