Agatha Christie 35…Reread

今日は『無実はさいなむ:Ordeal by Innocence(1958)』のご紹介、クリスティ作品のうち、ポアロもミス・マープルも登場してこない、いわゆる「ノン・シリーズ」は結構好きで、この本も再読になります(とは言いつつ、内容は忘却の彼方ですが)。今回のポイントは南極探検隊から二年ぶりに帰国した地理学者、キャルガリ博士が南極赴任直前の冤罪アリバイ(逮捕された犯人を自分の車に犯行時刻に同乗させていた)を持ち帰ったところから始まります。然しながら犯人は獄中で病死しており、当局は恩赦手続きを施行します。冤罪だったわけで、逮捕された人間の殺人罪は無効になります。ところが、真犯人は誰になるのかで、残った一家は各人が疑心暗鬼に陥ります。物的証拠も少なく、誰それは確実に無罪だと証明できるものがないなかで、関係者各人の心はどう揺れ動いていくのかが、この物語のキモになります。緊張感が続くなかで、恋愛も壊れたり、あるいは深まっていったりと、こうした心の機微をおどろしく描くのはさすがクリスティです。自分としてはお気に入りの一冊ですが、不思議なことに巷ではさほど高評価をされておりません。他人がくだす評価や信頼というのは、本当に当てにならないものだと再認識した次第です。