マクロイ女史は、人の内面を抉っていく、その心理的なプロットに共感を覚えるので大好きな作家の一人です。加えてスリラー的な要素も織り込んでいて、エンターティメント性は高くなっています。こうしたコンテンツはデビュー作でもある『死の舞踏:DANCE OF DEATH』(1938年)にもぼちぼち織り込まれています。当時はDNA鑑定などもなく、指紋とか現場にある証拠品をもとに、動機があって、且つアリバイの確証できない犯人を追い詰めるというのが、警察側の一般的な捜査手法だったわけですが、本作から登場するベイジル・ウィリング博士の手法は「心理的な指紋」探しから、真犯人を絞り込んでいきます。殺人という犯罪を犯したとき、性格破綻者であれ誰であれ、必ずその事実を隠そうと心は動くものですが、そうすることで図らずも幾つかの「失態=ミス」を残すものです。そのミスの心理学的な原因を探ることで、隠していることを掘り出し、外堀を埋めていく手法になります。このケースもそうですが、「被害者が死んで得する人間が誰もいない」という状況から始まります。すなわち「動機の不在」から事件解決を行わねばなりません。ところが、犯罪を引き起こすのが人間である以上、動機の不在とは有り得ず、「隠されている動機を見つける」というステップが必要になってきます。本書でも「偶然による殺人事件など無い。必ず心理的な背景が存在している」として、徹底した心理的指紋調査を行います。後年作品のように磨き上げられた心理描写は物足りませんが、さすがマクロイ作品だと感じました。









