エラリー・クイーン2

発表が1929年という、クイーン氏のいわば処女作『ローマ帽子の謎:The Roman Hat Mystery』を読んでみました。ローマ帽子といっても舞台はニューヨーク、ローマ劇場で上演中に発生した殺人事件なので、その対象者(容疑者)は数多あるなかから真犯人にたどり着くまでのプロセスを、かなり緻密に描かれています。ニューヨーク警察の警視であるリチャード・クイーン氏と、名探偵で推理小説家でもあるエラリー・クイーン氏の父子コンビが活躍する推理小説になります。
被害者はモンティ・フィールドという悪党ですが、殺人事件の真犯人を見つけることが警察の使命でもあり、しらみつぶしに捜索していきますが、あるはずの被害者のシルクハットが消えてなくなり、その事件の背景がますます謎に包まれていきます。面白いのは「モンティ・フィールドを殺したのは誰か」として、物語の冒頭に被害者・探偵などなど、なんと40人にも及ぶ容疑者リストを掲載しています。今からすれば古典的な手法には見えるのですが、当時の読者は、大きな対象者から徐々に核心に近づいていくプロセスを、おそらくはワクワクとしないがら楽しんだと思います。
第一作ということもあり、父親のリチャード・クイーン警視が陣頭指揮をしながら、事件の解決に向けたリーダシップを発揮している様を主体に描いております。ここではエラリー・クイーン氏はサポート役に徹していますが、そのスマートで且つ鋭い観察眼は、これから先の大活躍を十二分に彷彿させるものがありました。