エリス・ピーターズ女史の「修道士カドフェル」シリーズ、第10作目『憎しみの巡礼:`The Pilgrim of Hate』(1984)は光文社文庫版で岡達子さん訳になります。相変わらずステーブン王と女帝モードのいさかいは続いておりますが、女帝モードがロンドンに迫り、いよいよ戴冠とかいう状況になってきました。州の執行長官になったヒュー・ベリンガーにとっても穏やかならぬ状況ではありますが、カドフェルのいるシュールズベリー修道院で聖女ウィルフレッドの祭りが催され、奇跡を求めて大勢の巡礼客が街を訪れます。そうしたなかで起きる事件にカドフェルはまたもや巻き込まれていきます。しかも女帝モード側の騎士として街を訪れた、息子オリヴィエと嬉しい再開をします。人が集まれば、派閥ができて、やがて諍いの種となってしまうのが世の常ですが、今回もまた、若者が感情に任せて人を殺めてしまいます。やがて激情から覚めると、そこには後悔しかありません。贖罪の旅が始まります。殺めた犯人を例え抹殺しても、この世には何も残りません。カドフェルはこうした負の連鎖の繰り返しを止めるべく動き、あらたな希望と喜びを生む手助けをします。とても良い話でした。ちなみに女帝モードは、ことなかれを目論むウェストミンスター司教の意向をひっくり返し、ロンドン市民によってロンドンから放逐されました。不遜な対応で臨んだ女帝に市民が「ノー」を突きつけた形になったのです。市民のパワーが大きかった点は、当時の日本とは違った世界ですね。









