さて、新春初めの書籍紹介はメルヴィルからです。氏は有名な『白鯨』の作者でもあり、今回は『書記バートルビー:Bartleby, The Scrivener』(1853 )を読んでみました。日本では中篇『漂流船』と組み合わされて、光文社古典新訳文庫から出版されている本の中に収録されている短篇です。ときは十九世紀、ウォール街のとある弁護士事務所に雇われた新人書記役「バートルビー」氏の、まあ世間から云えば「不可解な行状」を面白おかしく描いている作品です。文字面だけを平たく読んでしまうと、空気が読めない変な奴の話、とかで終わってしまうのですが、メルヴィルが訴えようとしているのは、おそらくは近代社会のうちに「後ろに隠れている闇」の部分ヘの警告ではないでしょうか? いまでもそうですが、金融主義世界の象徴のようなウォール街を舞台にして彼の言動を描写することで、逆説的に警鐘を鳴らしていると考えても良いかも知れません。これは私たちが今、日々生活を営んでいる世界に対しても、同様だと感じました。言葉の欺瞞で、今も昔も資本主義の実態は「拝金主義」です。この世界で常識とされているものが、本当に正しいのか? 程度の違いはあれ、誰でも大なり小なり資本主義の「常識」に取り込まれて、疑問もなく社会生活を送っています。そこにグサリとメスを入れてきたメルヴィル、私たち読み手に鋭いメッセージを投げかけているように思えます。









