『ヤ〜ビと氷獣:Yerby and Winter Beast』(2025)を読んでみました。たぶん梨木香歩さんの本を読んだのは四年ぶりです。しかもミステリでなくファンタジーものです。日本人作家でとりわけ好きなのは、梨木さんと上橋菜穂子さんですので、さもありなんという話です。今回は主人公ヤービの登場はあまり多くないですが、それでもサニークリフ・フリースクールの面々がおりなす、寒くて短い冬休みのすてきな出来事を、梨木流にみごとに展開しています。こういう本を読んでいると、俗世の些事は、頭からすっかり消えてしまいます。これこそ読書の醍醐味でしょうね。たしかに小説の中でも、現代社会同様に内戦の影が背景として描かれておりますが、それは人間や生きものたちにとって、本当に大切なものを気づかせてくれるための背景として置かれているように思えます。大きな戦争も、はじめは人々の小さな黒い気持ちから始まっていると、この本では訴えています。氷獣という存在も、周囲に多大な被害を及ぼしてしまいますが、その心の中は「寂しさ」にあるのだと。孤独も孤立も負のエネルギーを生み出す大きな力になってしまいます。自分を分かってくれる「なかま」がそばにいる、遠くともどこかにいる、そう感じることで負のエネルギーは抑えられるはずです。カテゴリー的には児童文学になるのでしょうが、大切なことを思い出させてくれる一冊だと思います。









