Ellis Peters 5

エリス・ピーターズ女史の人気シリーズ「修道士カドフェル」の第20巻目『背教者カドフェル:BROTHER CADFAEL’S PENANCE』(1994)を読んでみることにしました。この翌年、1995年に女史は残念ながら亡くなりましたので、この作品が同シリーズ長編としては遺作に当たります。作家としての栄誉はすでにご紹介しているのですが、じつはチェコ語の翻訳家としても有名で、十数作の詩集や古典を翻訳し、チェコスロバキア国際関係協会の金賞を受賞しております。才長けた人間は他の分野でも見事な足跡を残すという好例です。また、彼女は都会を嫌っておりましたが、唯一プラハだけは例外だったようです。さて、本作品ですが「背教者」というのは、つまりカドフェルの所属していたベネディクト会の修道士にとっては、原則として外の世界に(修道院の塀の外に)出てはならないのだそうです。定住誓願をするということは、神への約束事であるので、塀の外に出れば「背教者」に当たるわけでしょう。他の修道会ではそんなことは無いようですが、世界最古の修道会でもあるベネディクト会では厳格に運営されていたようです。しかも、物語の舞台は紀元12世紀ですので、厳しい規則は云うまでもありませんが、イングランドの内乱を収めるための会議への参加という名目で、カドフェルは塀の外に出ます。そこで起きた事件をカドフェルの才覚で収めていきます。キリスト教圏ではない国々でも、真実を捉えて、正義とは何か、罪とは何かを自問自答しながら一歩ずつ進んでいくカドフェルの心には、多くの人々が共感を覚えるはずです。