オッペンハイマー

フローレンス・ピューが出演するので封切り翌日に出かけてきました。とはいうものの、この作品の日本での上映は半年以上遅れました。ヒロシマやナガサキの被爆者の心に配慮したという話も有りますが、それは嘘でハリウッド的には、おそらくアカデミー賞という第三者のお墨付きがあれば、そのタイミングでの上映のほうが興業的なリスクを避けられると踏んだのでしょう。日本人はアカデミー賞大好きですから作戦成功です。あらためて言うまでもなく、内容的には今までの米国のロジック「戦争集結を早めるための手段」として原爆を肯定したものです。ナチスドイツとの原爆開発競争という当初の旗印は、ドイツ降伏でなくなりましたが、さらりと趣旨を日本との戦争終結対策に切り替えたあたり、米国のしたたかさを感じます。すでに東西冷戦を見越していたので、極東の島国の武装解除と反共橋頭堡確保を急いだのが実態だと思います。冷静な世界観を持っていない日本政府と軍部は、戦力の劣勢を知りながら、すでに陣地拡大策に切り替わっているソビエト連邦にすり寄るという愚挙に時間を使い、早期無条件降伏の機会をないがしろにした罪は大きいと思います。