Anthony Horowitz 8

アンソニー・ホロヴィッツの『死はすぐそばに:CLOSE TO DEATH』(2024年)はホーソーン&ホロヴィッツのシリーズでは五巻目となる最新刊ですが、古書店店頭で安売りしているので思わず購入して読んでみました。こうした人気モノはたくさん売れる一方、古書では値崩れするのかも知れません。車やカメラと一緒で需給バランスで(中古)価格が左右されるのでしょう。
…で、内容ですが、いつものような重層構造で過去と現在、あるいは空想と現実との間を行き来しながらストーリーを進めていくので、自分のような血の巡りの悪い読み手の場合は、けっこう頭が錯綜してしまいがちです。さらに悪いことは、この物語は三人称でも描かれています。巷には様々な小説が存在しますが、相対的に言えば一人称構文のほうが読みやすいです。登場してくる人物の座標が頭に入りやすいうえ、読み手もストーリーに没入しやすいためです。とはいえ、印象の多様性はあきらかに三人称のほうが広がります。つまり読み手の思い込みが千差万別になるためです。ことさらミステリー物で、犯人像を追う「フーダニット」的なストーリーでは、この要素はあったほうが厚みが増すので、ワトソンやヘイスティングを敢えて置いて、読み手を翻弄させているのです。こうした手法はさすがに現代ミステリーのホロヴィッツだけあって、ぬかりない構文設計と言わざるを得ません。…という観点では愉しめましたが、小説としてみたときは「変化球に頼りすぎている」感が拭えません。このシリーズ、噂では十作品を上梓する予定なので、次回作に期待をしたいと思います。