以前、クリスティ作品のベスト3に挙げた、メアリ・ウェストマコット名義の『暗い抱擁:The Rose and The Yew Tree(1947)』 中村妙子さん訳も勢いで再読。今回も内容をほとんど覚えていなかったので、再読効果(=内容深堀り)がどれだけあるのかが不安になりましたw。これもミステリ小説とは云い難い内容ではありますが、以前は分けていた作者名をアガサ・クリスティに一本化したのは、多分に早川書房側の都合(より高い宣伝効果?)なのでしょう。全編恋愛小説として描かれておりますが、皮肉っぽく考えてみれば、まさに恋愛こそがミステリーだと言うこともできます。主人公はノリーズ大尉、交通事故で下半身が動かなくなったものだけが感じられる観察力で〔とはいえかなり間の抜けた見方で〕、物語の骨格を解いていきます。初読時の記憶が殆どなく、そのときには偉そうに『ベスト3である』と評してしまった作品ではありますが、今回の印象では、そうは思えまなかったのは興味深いことです。要するに、読む時によって作品の評価はかなり変わっていくものなのでしょう。考えてみれば当たり前のことで、前回と今回の読者(=自分)は、同じようでいて年代も環境も違う人間でもあるということです。今回の読後の感想では、イザベラが云々の話ではなく、それを言語化しているノリーズ大尉の駄目さ加減を強く感じてしまいました。主人公に思い入れ(=共感)ができない作品は、どうしても評価はできませんので、今回の書評はあまり高くありません。イザベラましてやゲイブリエルの物語ではなく、あくまでノリーズ大尉の物語として捉えると、妙な意地を張っている間抜けな男の回想録としか思えませんね。ジェニファーやテレサの気持ちを身勝手にしか解釈できないのは、やはり頭が悪いのだと思います。









