Michael Innes

ようやく帰国しました。多くの人が付けているので、また忖度マスク生活になるのですね。さて今日はマイケル・イネスです。以前、彼の他作品ですが、ぱらぱらとめくって目を通してみたときに、文章がなかなか取っ付きにくい感じがしました。そんな訳で、イネス作品には手を触れずにおりましたが、何ごともまずは触れてみてからと、思い切って『ある詩人への挽歌』(1938年)を読んでみることにしました。この小説は、章ごとに語り部が代わっていく構成で、最初の章の語り(靴直し職人)が、甚だ脱線気味でうんざりしたものの、途中から章が変わるごとに次第に面白くなり、最後は幾度も捻りが襲ってくる展開で、さすがに人気のある作家だと感じました。スコットランドの古城が舞台になっているのですが、あやしい空気がそこはかとなく漂っています。イングランド人にとっては、やはり随分と違った土地柄と人間性なのでしょう。余談ですが、その昔、グラスゴー郊外のリンクスコースでゴルフをしたことを思い出しました。グリーンもへちまもなく、ヒースの荒野にただぽんと旗が立っているだけのコースでしたが、そうした(荒れたままの)自然に囲まれている土地をみて、少しばかりスコットランドという国を垣間見た気がしています。霧が多く、いつ幽霊が出てきても不思議ではなさそうな雰囲気です。途中からさらに唐突に、オーストラリアに舞台が変わるのですが、延々と広大に続くオーストラリアの大地の描写はさすがと感心してしまいました。イネス自身もオーストラリアに造詣があり(アデレード大学教授)なるほどなーと納得しました。心の奥底にまで丁寧に描写するような重厚な作風ではなく、むしろ淡々と人間社会を俯瞰して、皮肉っぽく描いていく作家のように思えました。ある意味では英国的な作風と言えるのかも知れません。他の作品も読んでみようと思います。