海外ミステリ疲れなのか、このところ若干脱線気味ですが、米国で評判のファンタジーノベル、冬の王シリーズの『熊と小夜鳴鳥:The Bear and the Nightingale』を手にしました。
アーデン女史はテキサス生まれなのですが、出身の名門女子大ではロシア語を学んでいたようです。在学中にも二年間ほどモスクワに居たという話からも、おそらくこの地域に水が合ったのかも知れません。ヒロイン役のワーシャという名は、自分探しの旅の途中、ハワイの農場で働いてきたときに出会ったウクライナ人少女の名前から来たようです。旅をしながら、カフェ、公園、図書館などで執筆活動をしてきたという尊敬すべきスタイルをもっている彼女のフットワークと世界観は、そのまんま小説の中に溶け込んでいるようです。
舞台は14世紀のルーシ(ロシアの前身)、キエフ公国の衰退のあとモスクワ大公国に変わった頃の物語です。今で云うウクライナ、ベラルーシ、ロシア西部の10以上の公国からなる連合体で、強大な隣国キプチャク・ハン国に緩やかに隷属しながら人々は暮らしていた時代です。ルーシの民はイスラム教を強いられることもなく、村々には正教会が建てられ、表面上は布教が落ち着いた時期にあたりますが、地方の民の暮らしの根っこには、まだ旧くからの自然への崇拝の精神が残っていました。
この物語でも鍵になるのが「チョルト(精霊)」信仰です。自然物や身近なものには必ず精霊が宿り、彼らへの畏れや感謝が日々の暮らしの中で実践されていたわけです。ところが時とともに、精霊たちとのコミュニケーションが希薄になり、その結果、自然界からの手痛いしっぺ返し(凶作や天災など)が頻繁に起きるようになってきます。そのような時代、森に住む精霊たちと会話が出来る能力をもつ少女、ワーシャが繰り広げる冒険譚です。三部作なので、続きは早々に読んでみようと思います。









