アーロン・エルキンズの学芸員クリス・ノーグレン博士のシリーズはけっこう面白く、『画商の罠:OLD SCORES』(1993)も勢いで読んでみました。シアトル美術館のクリスが向かった舞台はフランスです。ここでも未だにナチスドイツ占領下のときに起きた、ユダヤ人からの絵画の略奪が尾を引いているようで、その所有権の正しい行き先について紛争が続いているようですが、今回のテーマはそれにとどまらず。真作/贋作のあり様についての議論が紛糾しています。そもそも芸術作品である以上、観る人に感動を与えるかどうかは重要な要素ですが、その作品が本当に芸術家本人の製作によるものなのかどうか(真贋の議論)という世界とは、別の次元の話になるのかも知れません。贋作というのも、騙すための作品と、あきらかに偽物(レプリカ)とに分かれます。贋作はその意図からして違法だと思いますが、出来の良いレプリカはどうなのかという点では、これを闇雲に否定するのも妙な気がします。さらに言えば、画家自身も生身の人間であり、駆け出しのころの作品と、円熟期の作品、さらには画風が衰えてきた頃の作品とに分けてみると、真作といえどもその価値は均一とは言えません。たとえばレンブラントには優秀なお弟子さんが沢山いたようで、彼らがある程度作り上げたものを、レンブラント自身が仕上げるとかいう分業的工程も取り入れた芸術家だったようです。こうした複層的な要素を考えていくと、芸術というのは、なかなか単純に評価するべきものでもないなと思えてきます。ミステリー小説ではありますが、絵画や芸術作品について、とても勉強になりました。









