KITARO

調子の悪いときは映画に限る、ということではあるのですが、暮れにもかかわらず肝心の面白い映画があまり見当たりません。そこで、周囲から「面白かった」と聞いていた『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観てまいりました。舞台が昭和31年の日本、ということで、自分としてはかなり関心をもって、とりわけ時代背景に見入ってしまいました。記憶の片隅に総武線を蒸気機関車が走っていたことを思い出しました。都内に行くと傷痍軍人が路傍にいて、子供心にとても怖かったこともありました。まだ戦後は続いているという時代でしたね。映画の内容は原作にリスペクトはしつつも、ちょうど鬼太郎が生まれる直前のストーリーなので、内容的にはほとんどがオリジナルなのでしょう。描写だけでなく、作り込みもしっかりしており、ホラー要素もふんだんに織り込み、大人が観て愉しめるアニメに仕上がっていると思いました。サラリーマン「水木」は、原典でもある「墓場の鬼太郎」にも登場してくるキャラクターですが、そこは鬼太郎の育て手として上手につなげています。鬼太郎の父親は「目玉おやじ」として描くのではなく、まだ五体満足の幽霊族「ゲゲ郎」として物語の中で活躍します。舞台にしている哭倉村は、まるで横溝正史の映画のように、近代化から隔絶された特異な世界を形成しています。映画のあと水木のポスターがありました。映画のなかでも玉砕の馬鹿らしさや、ただただ生き抜くことに固執した作者の思いを語ったようなキャプションに感動しました。水木茂さんが生き残ったことで、私たちはこうして彼が紡いだ作品に感動しています。生きるということ、生き続けるということは大切なことだと改めて感じました。