Monochrome考

昨年観た『ゴジラ-1.0』ですが、そのモノクロ版『ゴジラ-1.0/C』が公開されたので、どんなものかと観にいきました。写真が好きな自分なので、色彩を抜いた情報と、そこから得られるものを確認したいという気持ちもありました。最近はハリウッドでもカラー映画のモノクロ版リメイクは散見していて、色彩を抜くことで何かを際立たせるという手法が出来つつあります。云うまでもなく、カラー版から単純に彩度を抜くような話ではなく、シーンごとにコントラストやトーン調整も行いながら作りこんでいく方法を採っているようです。巷のレビューを観ていると、モノクロ映像版は高い評価を得ているようですが、自分的には手放しでベターとは思えない出来映えでした。
風景や報道写真のようにファクトを写す場合、情報伝達手段としてモノクロはカラーよりも雄弁になるケースが少なからずありますが、この作品の場合、オリジナルはあくまでフィクションですので、モノクロ化で没入感は減ることになります。二度目なので、概要はすでに残像化されており、細部の印象の違いを認識することが出来ますが、逆に初めにモノクロ映像版を観てからカラー版を観る、としたときには何が起こるのでしょう。もはや出来ない相談になりますが、おそらく今回よりも感動的な発見があると想像できます。
そもそも、カラーvsモノクロとかいう二択的な評価は正しいやり方とは思えません。日常の写真撮影でも意識しておりますが、無理くりに色彩を消せばよいではなく、シーンごとにトーン調整でベスト値がどこにあるかを探る方が映像管理手法としては正しいと思えます。映像でも写真でも、その根本はコミュニケーション、繰り返しますが「情報伝達手段」のはずです。無闇にMonochromeにこだわり過ぎると、却って墓穴を掘る(=意図した情報が伝わらない)ことになるでしょう。