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西村ツチカさんの漫画の劇場版『北極百貨店のコンシェルジュさん』を観てきました。映画館でのアニメは、二年前、コロナ禍のさなかに観た『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』以来でした。歳のせいか、世の中のせいか、自分の座標軸が、アニメやファンタジーの世界から、どんどん遠くに移っているのかも知れません。漫画を見ている方は飛ばして頂いて結構ですが、このアニメでは、人は店員、お客さまは動物たちという変わった設定で、新人のコンシェルジュ(そもそも新人がコンシェルジュなど出来るのか?とかいう話は別にして)が、慣れない役割にもめげずに、お客様との触れ合いのなかで、どんどん成長していくというストーリーになっています。こうしたファンタジー物は、こころの中を空っぽにして旅をするような姿勢で観るのが一番です。とは云え、ミステリや探偵ものばかり読んでいる頭では、ついつい「なんで「北極」百貨店なのか?」「この設定に何かの意味があるのでは?」「この動物を選んだ理由は何か?」などと云った妄想が、次から次へと浮かんできます。ここでは「VIP」ならぬ「VIA:Very Important Animal」が定義されていて、いわゆる「絶滅種、絶滅危惧種」を指しているようです。ニホンオオカミやワライフクロウ、あるいは謎のペンギンことオオウミガラスなど、この世界から人間の愚かな経済活動で失せてしまった動物たちが登場してきます。この物語りはそうした人間たちが、生き物たちに店員として傅く形で贖罪している様子を比喩的に描写しているのでしょう。もちろん今を生きている彼女らが、直に絶滅に参画したわけではありません。でも現代社会でも同様に、凄いスピードで種の絶滅は進行しております。私たちはつまり「不作為の罪の当事者」でもあるわけです。このことを自覚しないと、この物語りは単なるノスタルジーで終わってしまうでしょう。