ジブリ吹替

アカデミー賞受賞に感化されたわけではないですが、宮崎駿さんの『君たちはどう生きるか』を観てきました。たまには日本発の作品を外国の視点から覗くのも面白い、ということで、今回は英語吹き替え版を選択しました。英語版のタイトルは『THE BOY AND THE HERON』でしたが、考えてみると直訳して『How do you wish to live your life?』あるいは多少色付けして『How do you guys want to go on your life?』などと標記しても、おそらく意味不明なメッセージになってしまうと思います。そもそも日本語タイトルが訴えようとしている意味自体が、日本語ネイティブな我々ですらよく分かりません。曖昧な理解で事足りる日本人にしか通用しないでしょう。
舞台は先の戦争のころ、東京の空襲で病院が火災に遭い、そこに入院していた母親を失ってしまった少年「眞人」が疎開先〔Saginuma〕に移り、しかも後妻として娶った夏子は亡き母の妹、しかも身ごもっています。普通に考えても思春期の少年のメンタルは相当に参っていたはずです。そこで出逢ったのがアオサギ〔Heron〕です。ですから英文タイトルはシンプルで良かったと思います。まさに少年とアオサギの冒険なのですから。
二人の周りに出てくるキャラがじつに愉快で、とりわけジブリの描くおばあさんが傑作です。突然に消えた夏子を探し出すために、時空を超えて不思議な世界に旅立ちます。父親も素敵な人だし、少年が心を開けない夏子もすてきな女性、そして異界で眞人を助けてくれる女漁師キリコや、炎を操ることが出来るヒミなど、宮崎作品にはいつも素敵で強い女性陣が登場してきます。じつは自分は『砂の惑星』でフローレンス・ピューに一目惚れしてしまい、今回も彼女がキリコ役の声優として存在感を示していました。ここも感動ポイントでしたね。宮崎氏のアニメはハリウッドでも評価が高く、マーク・ハミル、ロバート・パティンソン、クリスチャン・ベールなどトップスターが声優役で活躍しています。予想以上に愉しめた吹替え版でした。