Spring Violet

3月になったので、いろんな場所で色付きが始まっています。そして春を告げる草花「春の使者」と云えばスミレ(Violet)が挙げられます。数年前にここのエッセイで取り上げましたが、冬が厳しく長い北海沿岸にある、城壁に囲まれたドイツ・ハンザ同盟の街ロストックでは「春の女神の足跡に最初に咲くのはスミレ」という言い伝えがあります。その年最初のスミレを誰かがみつけ、それを棒の先につけて戻ってくると、塔の見張りが春を知らせるラッパを吹き鳴らしたという伝説が残っています。
意外なことですが、日本ではちっこい草花の扱いのスミレも、世界という舞台になると、登録されている800種のうち、なんと500種もが「木」として扱われています。これはつまり、一般的に植物の世界では、乾燥した土地では樹木の方が有利と云われていることと関係しています。ところが、季節ごとの環境変化が極めて大きく、しかも年じゅう湿潤である日本列島の場合では、ちいさな草花になってスピードの速い環境変化に柔軟に適応していった方が有利だと考えたのでしょう。けっこうしたたかな植物でもあります。こうした特性から、世界中のいたるところに分布しているスミレですので、古今東西、古くから人々の目にとまって親しまれ、多くの伝説に育まれてきたのでしょう。