手遅れ

関東甲信も梅雨入りしましたね。これからはしばらくカメラやレンズをドライボックスに入れて、読書三昧と行きたいところですが、公私とも諸事雑事が溜まっているので、なかなか想定通りにはいきそうにありません。さて、今ごろになって、国から「アメリカザリガニとミドリガメの(条件付き)特定外来生物指定」が発表されました。
そもそも、特定外来生物というのは、海外起源の生物種のなかで、国内の生態系、人の生命や健康、農林水産業への被害が懸念されるものを指し、これらの飼育等、輸入、野外への放逐、譲渡/引渡し/販売等が禁止されているものです(研究等の目的は除く)。そして、ややこいしいのは「条件付き」という点で、捕獲や一般家庭での飼育、無償譲渡については制限しない、という意味です。これは該当種が既に国内生態系にあまねく浸透しており、ある程度の「現状」を受け入れざるを得なくなっているための免罪符的な枕詞です。当初の移入時に、国は先々を考えることなく輸入許可を出しているため、それの失策を忖度したものでもあるのでしょう。アメリカザリガニは、その昔食糧事情の改善のために、輸入し始めたウシガエル(当然ながら誰も食べなかったので計画自体がとん挫)の餌として学者先生が率先して輸入したものであり、ミドリガメは戦後の高度成長期のペットブームに乗って、大量に輸入され、ペットショップや縁日で販売されていました。私自身も買ってきて飼育した記憶があります。とはいえ、ザリガニもカメも、脚のある生き物なので「脱走」します。逃げた彼らが、遠い異国の地の環境の中でサバイバルしようとすること自体は、生きものとして当然の営みなので、彼ら自身にはまったく罪はありません。今さら薄っぺらい法律で指定したところで、実態は殆ど変わることはないので、行政のマスターベーションでしかないと感じています。その昔、私自身も教条主義者で、これらの種の輸入はけしからんと騒いでおりました。然しながら、すでに手遅れなので、このような際限のない対策に税金を使う必要はないと、今は考えております。人の営みやグローバルな物資の移動により、今日の生態系は人知を超えて激変しながら動いております。そうしたなか、取り残されて絶滅が危惧される種の隔離や保護、そしてDNA保存に更にもっと資金注力することが必要です。先日も、千代田区の公園を散歩していたら、おそらくそこで生まれたばかりのミドリガメが一生懸命に、エサを探してか、安全な場所を求めてか、せっせと歩いておりました。ちっこいながらも、全身からあふれる強烈な生命力には驚かされました。後発だろうが何だろうが、環境変化に適応できるものだけが生き続けることが出来る。古今東西、いつの時代でも変わっていない定理だと思います。