大犬陰嚢

漢字で書いてしまうと露わになってしまいますが、小さな果実が犬のそれに似ているということから、こんな迷惑な名前が付けられました。春の雑草として挙げられるのが「オオイヌノフグリ:英名はヴェロニカ」です。
いまの時期、田んぼの畦道や路傍に目をこらすと、小さな小さなコバルトブルーの花が見つかるはずです。そもそも日本にはいなかった野草で、明治に入ってから外国との交易が増えたなかで渡来してきたものです。日本に来たのは欧州経由ですが、原産地は中東のイラン付近と云われております。
可憐ですが小さい花で、朝に咲いたものが夜には散ってしまいます。この時期なので、訪花してくる昆虫も少ないのに、何故に店開き(=開花)するのでしょう。おそらくは需要と供給の関係で、春先のまだまだライバルが少ない時期だからこそ、このように小さな花でも商売(送粉受粉)ができるだと思います。3〜4月になってしまえば、それこそ立派な花を咲かす草花がたくさん咲いてしまいます。昆虫たちも増えますが、小さい花に関心をもつものは少なくなるのと、せっかくの送粉が他の種類の花に訪花してしまったりしたら元も子もありません。つまりオオイヌノフグリ同士の送受粉の確率も問われることになりますので、その点でもライバルが少ない時期のほうがメリットが大きくなる、という計算式で、この時期の開花に結び付いたのでしょう。
しかも保険はかけています。強い子孫は期待できませんが、訪花昆虫も来なかった場合は、花が散る前に自家受粉して結実するという保険です。こうすることで、異国の地でもオオイヌノフグリはしっかりと自らの橋頭保を確保しているという訳です。