カーター・ディクスン

ミステリ好きにはファンも多いカーター・ディクスンは、ジョン・ディクスン・カーという名前でも作品を数多出しております。密室殺人というテーマを深掘りした小説『殺人者と恐喝者(Seeing Is Believing) 1941年』を読んでみました。ロマンス有り、笑いもありということで、おそらく、作者の世界が好きな人には刺さるのでしょう。如何にして殺人を行えたか?という「ハウダニット(How done it?)」を追い求めているようで、アメリカの作家らしく「当時としては文明的な」仕掛けでトリックを成立させています。過激な言動で笑いを誘わずにはいられない、ヘンリ・メリヴェール卿(H・M)の推理考察と、殺人者を取り巻く美女や捜査官たちもそれぞれユニークです。邦訳本タイトルは、いかにもあと付け的なもので、要は「見えているのに見ていない」という実際に私たちの身の回りで、日常起こっている出来事を、作者自身はフォーカスしているのでしょう。もう一つ「催眠術」というのが、この本のキーワードですが、自分自身は信用していない世界なので、読み終えた今でもなお、私的にはヴィッキー・フェインの確信犯的殺人と結論づけています。実際問題、世の中、今も昔もそんなに善人ばかりではありません。