素数ゼミ考2

この特異な生態に大きな影響を与えたのが、氷河期ではないか?という説があります。地球の誕生以降、複数の要因によって幾度となくやってきた氷河期ですが、その時期、当然の如く地球は寒冷化してしまい、それまで命を紡いできた生きものたちの多くは、その寒さで滅んでしまいました。北米大陸でも緯度の高いユーラシア大陸でも、多くの生物種が絶滅しました。多くのセミも同じように姿を消してしまいます。昆虫たちは変温動物ですので、低気温で活動が鈍るうえ、樹木やなくなり、地表も凍結してしまった世界では生きていく術はありません。セミは地中生活が長いのですが、寒冷化の影響で表土はある程度の深さまで凍りつき、幼虫が生きていくための拠り所となる植物の根系も滅んでしまいます。ところが、北米大陸では、地形(盆地)や海流の影響で、ごくわずかに氷河の影響を受けずに、樹木がなんとか育つエリアが点在していたようです。砂漠のオアシスのように、そうした、極めて狭い範囲のホットスポットでは、表土も凍らず、木々が残り、それらの根から養分をセミの幼虫たちは摂取できたのでしょう。素数ゼミの生態は、生まれた場所を離れず密集して産卵・羽化する性質を持っていますが、そうした時代の環境記憶が全ての個体のDNAに刻まれているためでしょう。羽根を持っているので移動分散は可能なのですが、そうした冒険心に富む個体群は全て死に絶えました。残った個体群だけが生き残りの切符を得たわけです。〔画像は日本のセミです〕