出世街道?

9月なのに、まだまだ真夏のように暑いのですが、用事があり、しぶしぶ港区の方に出掛けました。インバウンド観光客の外国人も多く見受けられましたが、これだけ暑さが厳しいと、トウキョウへのネガティブイメージが生まれてしまうのではと、やや心配ではありますが、天候については打ち手がないです。大汗をかきながら、湾岸部沿いにある掘割の水路脇を歩いていたら、たくさんの小魚が群れをなして泳いでいました。目を凝らして見たところ、どうやらボラの稚魚です。ボラというのは、成長とともに名前が変わっていく、いわゆる「出世魚」とされていて、私の周りではオボコ→イナッコ→イナ→ボラ→トド、という呼び名になっています(これに加えてイナの前後に「スバシリ」とかいう呼び名もあるとネット上では紹介されていますが、実際のところ、漁師や魚釣り関係者からは聞いたことがないので省きます)。このステップこそが出世街道で、トドが最高位であり、大きさにすると60センチ以上にもなります(個人的には50センチ台はボラでいい)。ことわざの「トドの詰まり」という言葉は、そこから来ているようです。今回、掘割でスクーリングしていた群れは、10~15センチ大でしたので、イナッコということでしょう。まだまだ出世前なので、集団での遡河がよく見られ、毎年都内のどこかの河川で「大量の小魚が遡上、すわ大地震か!」などと新聞地方面を賑わせてもいます。遡河の理由は不明ですが、外敵を避けるためと適水温(夏場は水温が沿岸域より河川内の方が低い)によるものではないかと考えています。浸透圧調整が得意らしく、どんなに塩分濃度が低くとも活発に活動しています。寒くなってくると川を下り、夏になるとまた遡河します。やがて産卵時期になると海に出て、水深10mほどの海底で産卵します。沖合でに魚のようです(都心部では温排水の影響で、冬でも適水温の河川が多く、河川内に留まる群れが見られます)。海と汽水域を行ったり来たりして成長していく魚で、やはり出世していくためには、ときおり環境を変える「転勤」「転職」が必要なのでしょう。どんな環境でもやっていける耐性が鍵となるようです。