紫陽花考

毎年、この時期になると題材に取り上げてしまうのがアジサイです。学名では「Hydrangea macrophyllum」となっております。以前、私のブログでは「Hydrangea otaksa」とドイツ人医師のシーボルトが日本人妻、楠本瀧さんの名前を使って、お瀧さん⇒otakusaと種小名を登録したという話を載せました。それが1829年のことです。ところが、実際には、それより前に、同じく出島に来ていたスウェーデン医師のテュンベリーが登録していた種小名 macrophyllum が同じものを指していることが分かり、哀れシーボルトの種小名登録は無効になってしまいました(学名には先取権があるため)。シーボルトが纏めた日本植物誌には、otakusaという種小名がきちんと残っています。(ちなみに属名のHydranseaはリンネが1753年に定めています)解説するとHydranseaは「水の器」、macrophyllumは「大きな葉」ということのようです。ちなみに紫陽花は、土壌の酸性度合いで、淡青色→濃青色→紫色と変わっていくことが多く、それが花言葉の心移りになったりして、忠義心を貴ぶ武家からは好かれていなかったようですが、派手な手毬紫陽花はヨーロッパでは大人気、品種改良されて日本に逆輸入されたものも多いそうです。この花が寺に多いのには諸説あります。ネガティブなものもあるのですが、個人的に得心しているのは、水をやたらに吸う植物なので、脚気払い、厄除けとして門前に植栽されたという説です。ちなみに、お瀧さんとシーボルトの子である楠本イネは、混血ゆえ、女性ゆえの差別に悩まされながら、女性産婦人科医の道を目指し、のちに医院開院までしたそうです。こうした凄いドラマを思い浮かべながら、紫陽花の美しさを眺めるのも素敵なことだと思います。