仏之座

春の雑草のうち、面白いのがこの花です。近づいてみると何とも言えない艶っぽい形をしています。この名を聞くと、春の七草の「ほとけのざ」を連想してしまいがちですが、それは間違いで、あちらはキク科の今ではコオニタビラコと呼ばれている別の野草です。このホトケノザはシソ科の野草です。葉っぱの形が仏さまが座られる蓮華座を連想することから、このような名前を付けられたようです。いわゆる外来雑草(この呼び方は好きではありませんが)ではなく、世界中に自然分布している、言うなればコスモポリタン的野草です。少ないながらも秋にも開花するうえ、昆虫が訪花しなくとも大丈夫なように、保険として別に閉鎖花(花弁は開かずに自家受粉して結実する花)も揃えています。この時期に咲く野草として霜対策(葉にたくさんの毛をつけて傷まないようにしている)もしっかり施しています。花は小さいけれど大したものです。
しかも、出来上がった種には、少しばかりアリさんの好むたんぱく分ゼリーを付けています。グリコのおまけ〔古っつ!〕のようで、アリさんはこの草の種を巣にせっせと運びます。巣の中でおまけを頂くと、穴の外に種を廃棄します。ホトケノザとしては、種の陣地を大きく拡げたいのですが、いかんせんちっこい野草なので、遠くに種を運ぶことが出来ません。アリさんの脚力を利用して自らの陣地を拡大させている、こうした知恵がコスモポリタンたる所以なのでしょう。